高気圧酸素療法とは、高気圧環境下(2気圧)の治療装置の室内で、100%酸素を1時間吸入してもらい、全身に酸素を供給する治療法です。以下の病態に治療効果(①〜④)があることが示されており、後述の疾患に保険適応となっています。
① 組織の低酸素状態を改善
高気圧酸素治療は、動脈硬化による末梢血管の閉塞や外傷による組織の挫滅・腫脹により生じる末梢循環障害や、一酸化炭素その他ガス中毒により低酸素状態となった組織の酸素化を改善します。
② 創傷治癒を促進
末梢循環障害を伴う難治性の皮膚潰瘍の治癒を促進します。例えば、糖尿病や閉塞性動脈硬化症、褥瘡などによる皮膚潰瘍は、末梢循環不全や感染の合併によりたびたび難治性となりますが、高気圧酸素療法はこのような病態に効果があります。別項で紹介いたします血液浄化療法(レオカーナ・LDL吸着)を併用することにより、さらなる治療効果が期待できます。
③ 殺菌作用
ガス壊疽や壊死性筋膜炎などの重症軟部組織感染症、骨髄炎などに適応があります。
④ 減圧症における体内の窒素ガスの排除を促進
スキューバダイビングや潜水作業により体内に窒素ガスを生じる減圧症では、高気圧酸素療法は必須の治療法です。高気圧環境下での治療により、体内に蓄積した窒素の気泡体積が減少し、窒素ガスの肺からの排泄が促進されるのと同時に、組織の酸素化が改善します。
<高気圧酸素治療の適応疾患>
減圧症または空気塞栓症
急性一酸化炭素中毒、その他ガス中毒
重症軟部組織感染症(ガス壊疽、壊死性筋膜炎)
急性末梢血管障害(重症の熱傷又は凍傷、血管断裂を伴う末梢血管障害、コンパートメント症候群又は挫滅症候群)
脳梗塞
重症頭部外傷もしくは開頭術後の意識障害又は脳浮腫
重症の低酸素脳症
腸閉塞
網膜動脈閉塞症
突発性難聴
放射線又は抗がん剤治療と併用される悪性腫瘍
難治性潰瘍をともなう末梢循環障害
皮膚移植
脊髄神経疾患
骨髄炎又は放射線障害