出身大学:和歌山県立医科大学
資格、専門医:医学博士
日本外科学会専門医
日本消化器外科学会専門医
消化器癌外科治療認定医
認定産業医
診療科:消化器外科・内科、内科一般、外傷、人間ドック・検診、緩和ケア
得意とする診療:
❶腹部救急疾患に対する診断・治療
重症患者が救急搬送されてきた場合、まず、バイタルサインを評価し、異常を認めた場合は、速やかに、呼吸・循環動態の蘇生を行います。そして、腹部疾患を診断する前に、見過ごすと命に関わる出血性ショックや胸部疾患をまず除外する必要があります。ここで、腹腔内出血(外傷による内臓損傷や骨盤骨折、腹部大動脈瘤や内臓動脈瘤の破裂、肝癌破裂、産科出血)、重症胸部疾患(心筋梗塞、心タンポナーデ、急性大動脈解離、重症大動脈弁狭窄症、肺動脈血栓、不整脈)を認めた場合は、当院での加療は不可能なため、高次医療機関へ迅速に転送します。肋骨骨折による外傷性血気胸や消化管出血は当院での治療が可能です。
腹部症状を呈する疾患は非常にたくさんありますが、これらの中で、緊急手術を要するものは、腹腔内出血(上記)、穿孔性腹膜炎(消化管や胆嚢穿孔)、腹腔内臓器の虚血(絞扼性腸閉塞、結腸軸捻転、血栓症、卵巣茎捻転など)、臓器の急性炎症(急性虫垂炎、急性胆嚢炎)であり、緊急処置を要するものは、消化管閉塞、急性胆嚢炎・胆管炎、消化管出血です。消化管閉塞と急性胆嚢炎・胆管炎は管腔臓器の閉塞が主たる病態であり、放置すると穿孔、もしくは、感染の悪化から敗血症、多臓器不全をきたすため、早急な処置が必要です。閉塞して拡張した管腔臓器に減圧のためのドレナージチューブを挿入します。消化管閉塞にはイレウス管挿入、閉塞性大腸癌では内視鏡的大腸ステント留置術、急性胆嚢炎に対しては経皮経肝胆嚢ドレナージ、胆管閉塞には、内視鏡的乳頭切開及び胆管ステント留置術を行います。ドレナージが適切に行われれば病態は劇的に改善し、全身状態が安定したところで、根治的な治療(大腸癌根治手術、腹腔鏡下胆嚢摘出術、総胆管結石に対する内視鏡的砕石術など)を実施します。消化管出血に対しては、内視鏡的止血術を行います。
以上のように、当院では、腹部救急疾患に対し、時間外であっても必要な検査を行い、速やかに、緊急処置、入院治療に移行します。
❷消化器癌および良性疾患に対する手術治療
胃癌に対する開腹手術
大腸癌に対する腹腔鏡手術
巨大食道裂孔ヘルニア、難治性逆流性食道炎に対する腹腔鏡手術
腹腔鏡下胆嚢摘出術
腹腔鏡下虫垂切除術
鼠径部ヘルニア・腹壁瘢痕ヘルニアに対する腹腔鏡下ヘルニア修復術
痔核、痔瘻に対する根治手術
などを行っています。
❸消化器癌に対する化学療法
根治手術後に癌の再発予防のために行う術後補助化学療法と、手術不能進行・再発癌に対して行う全身化学療法があります。消化器癌診療ガイドラインに則った標準治療を実施します。また、薬剤投与ルートを確保するためのCVポート造設も必要に応じて行っています。
❹進行癌に対する緩和的対症療法
薬物治療を行い、消化器癌のみならず、あらゆる癌の進行に伴う痛み、食欲低下、倦怠感、呼吸困難、その他様々な苦痛症状を速やかに緩和します。薬物治療だけではなく、経口摂取を可能にするための消化管バイパス術や内視鏡的消化管ステント留置、消化管閉塞に対する減圧のための胃瘻造設/PTEGや人工肛門造設術など、個々の病態に応じた治療を臨機応変に行い、苦痛症状の緩和と生活の質改善を図ります。また、入院治療だけでなく、希望される患者さんには、在宅療養を受けてもらえるよう支援を進めてまいります。
❺上部・下部消化管内視鏡検査
拡大機能や画像強調機能を搭載した新しい機種のファイバースコープを用い、以前の内視鏡では発見困難であった病変も認識できるようになっています。狭帯域光と呼ばれる青い色の光(NBI)を病変に照射し、拡大して観察すると、粘膜構造や微小血管の不整像を視認しやすくなります。
細径の上部消化管内視鏡も使用可能です。最新機種のファイバースコープであり、以前の経鼻内視鏡とは異なり、通常径の内視鏡と同レベルの高画質な内視鏡画像が得られ、NBI観察も可能です。検査を受ける患者さんの負担軽減に寄与します。
2023年7月より有田川町にて内視鏡検査による胃癌検診が開始され、当院でも受けていただけます。上記のファイバースコープを用い、癌の早期発見に努めます。
❻早期胃癌・大腸癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
内視鏡検査による観察、診断だけでなく、早期癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)も実施しております。胃癌では粘膜層、大腸癌では粘膜下層浅層にとどまると考えられる早期の癌で、ポリペクトミーができない平坦な形状や、径の大きな病変がESDの対象となります。
❼総胆管結石に対する経口胆道内視鏡(SpyGlass : Boston Scientific社)を用いた電気水圧衝撃波結石破砕術(EHL)
通常の内視鏡的砕石術が困難な硬い結石や巨大結石に対して実施します。経口胆道鏡を内視鏡の鉗子孔を通して胆管内に挿入し、さらに細いEHLプローブを胆道鏡の中へ通します。このプローブ先端には電極がついていて、ペダルを踏むと、放電されます。水中で放電を行うと、電極近傍の水分が瞬時に気化し、局所の圧が爆発的に上昇することで衝撃波が発生し、水中を伝わっていきます。したがって、胆管内を生理食塩水で還流させながら結石破砕を行います。EHLプローブも胆道鏡もディスポーザブルで非常にコストがかかることが難点ですが、必要なケースでは、躊躇なく実施します。